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| 2003年1月 | ||
夫の友人が師走に入って失業した。そして大晦日、その妻に赤ちゃんが生まれた。さて、あなたが夫君ならこの一月どうやって過ごすだろう?再就職のために奔走するだろうか。否、この友人は仕事を探すのを止め、第一子の育児をしばらく楽しむことにしたのだ。 勿論彼女がフルタイムで40歳まで働いていたため、産休手当てをあてにできるということもある。しかし、就職活動を再開した時、数ヶ月の空白の理由に「育児」を挙げても不自然でない社会が存在するからこそできること。それは、首相自ら実践している。 2000年にブレア首相の第4子が生まれた翌朝、彼は通常どおり勤務していた。ところが、記者会見に赴こうとした首相をアドバイザーが引き止め、スーツからカジュアルな服装に着替えさせたという。「立ち会い出産で疲れていながらも、幸せなパパ」の演出に、スーツではまずいのである。 次の日、各紙は「ブレア首相が夫人とレオ君とのプライベートな時間を過ごしたいため、2週間公務をキャンセルした」との記事を掲載したのだが、批判的な記事は一つもなかった。これは父親による産休「Paternity Leave」の受け入れ姿勢に他ならない。日系某新聞では「ブレア氏産休」とは書かず、「家族の面倒を見るため」と説明。これは記者がお節介にも、ブレア氏の男の沽券を守ろうとしたためか、単に産休という言葉を思いつかなかったからか不明である。 産休が人生の一旦停止なら、人生レールの岐路ともいえる就職活動さえも、イギリスでは時刻表通りではなく、まちまちである。無論日本の入社式などというものはない。ベビーシッターによく来てもらっているサラは昨夏大学を卒業、今月末までアルバイトをして世界旅行に出る。仕事はそれから・・・よくあるパターンである。人を切る会社もあれば、雇う会社もある。それは大学4年の夏と限っていないだけである。長期的展望に欠ける経営方針のようだが、方針通りに行かない現実もあろう・・・というのは好意的すぎる見解か。 そして就職しても、転職という人生の乗り換えも多い。失業という強制的な乗り換えも珍しくないからだ。友人にやり手のビジネスマンがいるが、彼の仕事はハングマン、傾きかけた会社の建て直しのプロである。採算の合わない工場を閉め、千人単位で首を切る。それでも建て直せない場合は自分の首が飛ぶ。バブルがはじけた金融街では、去年も1万人ほどの首が飛び、今年はさらに1万の人たちが職を失うという。乗換えのある人生は脱線の可能性も高いが、時代の流れと共に人も流れるものだ、と言う認識があるようだ。 日本人にしてみれば、ひどい話に聞こえるが、実際首を切られて成功した人は珍しくない。近所のジョンはDIY好きが高じて、キッチンのリフォーム会社を作り、小さいけれどこの辺りでは名が知られている。ニックはホテルのイベントマネジャーだったが、失業中にペンキ塗りのアルバイトから再出発して、家のリフォームの会社で成功した。最初はリフォームといっても、古い家を買い取り、住みながら半年から1年かけてリフォームし、高い値段で売りに出すのを繰り返す。ここ6年間に3回引越し、現在地下にプールのある大邸宅を改装中、他にも4件工事中とか。子供4人連れてさぞやハードであろうが、バブルによる家の値段の高騰で波に乗ったようだ。 |
レオ君が生まれた時のブレア首相夫婦。シェリー夫人は4人の子供の母であり、法廷弁護士という複線レールの人生を歩む。 自営が多い基盤は、サッチャー元首相が失業率低下を狙って打ち出した「持ち家政策」だろう。雇用3人以内の小企業にVAT付加(17.5%の消費税のようなもの)を免除することで、起業したてでも大手との競争を可能にする。そして、成功した暁にはマイホームが手に 入るという政策であった。その現象は世紀の代わった現在も続いていて、古い家の多いこの国では左官屋、電気技師、ペンキ屋はいつも引っ張りだこである。また英国人の出前好きも、起業を容易にしているらしく、自宅でを受けられるサービスを挙げるときりがない。美容師、ケータリング、指圧師、アロマセラピスト、子供のパーテイ ー専門のエンターテイナー、変ったところで催眠療法師などなど。 夢の実現にチャレンジするために転職する人もいて、時にテレビで「No Going Back(後戻りはできない)」という番組をやっている。脱サラして家を売り払い、イタリアはトスカニー地方や、フランスのプロバンス地方に移り住み、日本で言うペンションを経営したりする人々の苦労だらけのドキュメンタリーである。彼らは言葉の違う異国でさえも、自分のレールを敷いてしまいたいらしい。 勿論一本レールに留まり、同一の会社勤続30年という人もある。ワーカホリックでなくとも、実際産休を取る父親は極小数派に過ぎず、平均的なのは、1−2週間の休暇だろう。ただ、人生で休んだり、乗り換えできる諸条件を揃えられるのが、英国なのだ。 私は新卒で某銀行に就職後、11ヶ月で転職をしてしまった。その他にもうんと道草が多い私にとって、この国の空気はありがたい。 |
| 2003年10月 | ||
「はじめまして。○○と申します。」パーティ等々、自己紹介をしなければならない場面は、日本にいる時より多い気がする。名前を告げ、一通りお天気や、ホストとの関係を話終えると、ほぼ例外なく訊かれるのが、「What
do you do? (あなたは何をする人ですか?)」 そしてこのOccupation欄は、パーティだけでなく、こちらの生活のすべてに付いて回る。子供の出生届けから入学申請書、ホテルのチェックインなど、名前とともに記入する。 ただ「職業欄」と私が訳したくないのは、もっともっと広義だからだ。例えば資格のあるもの、日本の数倍存在する「弁護士」や「会計士」は、子育てに忙しくて主婦をしていても、記入するのが普通である。現役でなくてもよいのだ。 この他にも、近所のママ友達にはリフロクソロジスト、理学療法士、マニキュアリスト、ケータリングサービス業、カーテン製造業、チャリティー・オーガナイザーなどが存在する。Occupation欄にそれを記入するかは個人の自由だが、「What
do you do?」の答えは無数、職業という言葉ではくくれない。 世間で認められたかどうかは、重要でない。自分が何であるか、何でありたいかということなのだ。謙遜な国民、日本人には難しいところもある。でも、流通関係という捕らえどころのない社会の一部でなく、個人の有り様の答えともいえる。したがってプライドの質も異なる。「OO会社勤務」のプライドは会社を辞めれば失うが、自分自身のプライドは一生育てていけるのではないだろうか。 勿論、食い扶持は稼がなければならない。ここでOccupationを仕事(=job)にしている人々と、仕事とは別にOccupationが存在する人々に分かれることになるようだ。生計をたてるためだけの仕事を「job-job」というように、明らかにOccupationとjobは一線を画するのだ。 |
フィニシング・スクールに行ったママ達はケータリングの素地があるので、お料理が好きが高じて開業する人も多い。カーテンメイキングも然り。 友人のエンリコはオックスフォードで博士まで修めた秀才。某米系投資銀行でリスク分析のシステム部門で働いていたが、昨年突然辞表を出した。夕食に招くと一本6 近所の窓拭き屋モーリスは、自称ランナーだ。国内の大会でも名前を聞いたことはないが、とにかく走ることが好きな人で、窓を拭いて生計を立てている。6ー8週間毎に来て、窓の外側を拭いて、一回12ポンド(約2千円)。この近所は軒並み彼のお客さんだから、通りの端から次々と窓を拭いてゆく。そして仕事をしない日はトレーニング。この思い切りの良さは脱帽ものである。
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| 2004年4月 | ||
今月初め、日本に一時帰国してきた。空港に降り立つと同じような外見の人々が見えて、アナウンスの甲高い女性の声が神経を逆なでる。「ああ、帰ってきたのだ」と安堵する。 女性男性に拘わらず、多くの人が茶髪になった。私を含めて。だからといって、ヨーロッパに近づいたわけではないようだ。久しぶりの日本で、疲れているのに人間ウオッチングを始めてしまうのは、私の性としかいいようがない。 まず、色白。そして、なぜ女性は皆襟を立てているのだろう。日本人の短い首を長く見せてくれるには違いないけれど。そして若い女性の靴はパンプスかバックバンドで、皺がよっているかリボンか花かが付いている。それでなければ20度にもなろうというのに、ロングブーツが目についた。男性はスーツ。どこを見渡してもスーツ。わが夫など、チノパンかコーデュロイ、金曜日などはジーンズで会社に行ってしまうから、かなり新鮮に見えた。 と、ここまではキレイにしている人たち。カジュアルになると、ジーンズはわかるのだけれど、どうしていい年した人たちが布地もしくはビニール地のスニーカーを履くのだろうか。遠足に行くわけでもあるまいし、なぜかぐーっとオシャレ度が下がってしまうように見えるのは私だけなのか。 ロンドンに住んでいるから、ヨーロッパ贔屓になるのはこの際目をつぶって頂きたい。でも、ヨーロッパ人でアメリカ人のようにビニール製のスニーカーを履く人は稀である。公立の学校でも制服のあるロンドンでは、通学には皮靴を履く。最近になって、子供やティーン達が日常着にスニーカーを合わせているが、よく思わない大人は多いのが現状である。 大人達もジーンズなら、スニーカーを履いても皮製にとどまるのがヨーロッパ。素足なら皮製のローファーである。そして、この靴たるもの、トータルなオシャレ度を決めてしまう恐ろしい存在なのである。靴は皮。それでファッションの順位は決められるといっても過言ではないと思う。 では上半身はどうか。暑くても、T−シャツは頂けません。老若男女、やはり襟があってこそ、カジュアルダウンでも品位が保たれる。素材は何でもよいかも知れない。でも、ちょっと襟があるだけで、落ちきっていないカジュアルを感じさせると思うのは、スノビッシュな考えだろうか。ユニクロでもスーパーでもよい。ちょっとしたエスプリを感じたいと思うのだ。 海外へも手持ちの服で出かけるだろう。では、リゾート地のファッションはどう演出するのか。ハワイなどアメリカ人が闊歩する土地ではT−シャツも許容範囲かもしれない。でも、モルジブ、モーリシャス、カリブの一部などヨーロッパ人がいる場所では、カジュアルもエレガントな要素が必要だと思う。日中は水着にパレオでも、夜はセクシーなサマードレスか麻のパンツにハイヒール。はずしながらも、行き届いたおしゃれが遊びなれた余裕を感じさせる。
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パステルなスニーカーもレザー使いだとピシっとヨーロピアンなカジュアルになる
観光にしてもそう。夜昼構わぬアメリカならまだしも、ヨーロッパを旅行するなら、夜と昼の顔をお持ち頂きたい。昼は男性、女性とも、革靴カジュアルが無難というもの。夜は女性なら肌を見せるなり、光る素材を用いるのが、美しいと思う。男性はやはりスーツ持参が望ましい。 勿論、ヨーロッパ人が皆そのような格好をしているわけではない。見るからに日本人よりみすぼらしいと思うかもしれない。でも、私はイギリスに住んで、些細ではあるが悲しい一つの真実を学んだのである。 それは我々日本人の「みてくれ」である。遅れ毛でも、金髪なら色っぽいのに、黒いと所帯じみてしまうように、アメリカン・カジュアルのコピーでは、かっこよくないのである。欧米人にみてくれで敵わない分、着るものでクラスアップする。せこいやり方かもしれないが、気分よく旅するための小さな知恵なのだ。 お金を持っていても、持っていなくても、人々があなたに接する態度が変わること間違いなしである。旅の恥は掻き捨てというのは、世界が狭くなった今、過去の遺物と化している。旅をするなら、ちょっとしたオシャレで得をして頂きたい。 |
| 2004年10月 | ||
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映画ブリジット・ジョーンズの2作目が12日に封切され、コリン・ファースファンの私は早速観に行った。火曜日の夜だったが、映画館はシングルトン(=英国版負け犬?)を含め女性でいっぱい、1作目にもましてぽっちゃりと太ったレネー・ゼルウィガーのコミカルさに映画館は様々な類の笑いで満たされた。 その翌週、こちらの主要紙に取り上げられたのが、日本のデスティーナ。ご存知だろうか、日本人女性にガイジン男性を紹介する登録制ご紹介システムで、NYに続きロンドン進出という記事であった。四大紙のひとつテレグラフ紙では、「ブリジット、おのき。日本人が来ますわよ。」との見出し。「日本人男性は女性進出の時代に着いて行けないので、もっと理解のある外国人男性との出会いを求める女性が多い」とのことであった。その上日本式クリスマスの過ごし方、日本のヴァレンタインデーのしきたりなど、日本人と付き合う際の注意事項まで掲載。そしたら記事だけでなく、スペクテーター誌上に、登録募集の広告が掲載されていると聞いた。インテリ読者層を考えると、「いいとこ、衝いてます。」 イギリスでも別にオトコが余っているわけでないので、手放しでは喜べないが、デスティーナ進出の礎石が打たれていたのはよかったかも知れない。実は、今年「負け犬の遠吠え」はこちらでもいくつかの媒体で取り上げられているのだ。ちなみに英語に訳すと「The howl of the loser dog」となるのだが、日本人男性に飽き足らない日本人シングルトンたちを描いた記事は、あちらこちらでお目見えしている。 で、質問である。12時間もわざわざ飛んでくる方々の夢を壊したくはないが、イギリス人男性とはそこまで理想に近いものなのだろうか。 いわゆる酒井順子氏のいう「高」同士のカップルが多いことでもわかるように、一般的にいって日本人男性よりも「高」な女性に理解はあるだろう。 しかし、だからといって家事をしてくれるかどうかは大きな疑問だ。まわりをみていても、うちの夫に爪の垢を煎じてのませてやりたいと思うこまめな人もいれば、な〜んにもしない人も結構いる。この現実は日本に伝わっているのだろうか。それに元来こまめな人を除き、パートナーである女性が強いから、こまめになったという経緯も見逃してはいけない。日本女性は「怖い」といっても可愛いもんである。 勿論男性を教育し、変えてしまうのも可能だが、変えられないのが生理的な問題だ。こちらの男性は毛深い。それに毛深い男性のワックス信仰が最近流行っているから、一見しただけではわからないのも難題だ。胸毛ならともかく、私も夫の背中に毛が生えているのを見つけた時は心底面食らった。進化の過程で人間の背中の毛はなくなったと思っていたからだ。それに体臭。汗をかいた時には仕方がないし、最近はケアする男性も増えたが、至近距離で過ごすことを考えたら、普段から臭っているのかどうか、冬であればわかりづらいかも知れない。 |
四大紙のひとつ、テレグラフ紙に大きく取り上げられたデスティーナ。日本人男性の株は暴落? いやはや、話の腰を折ってはいけない。きっと素晴らしい出会いがあって、お付き合いを始めるかもしれない。では、どうやって遠距離恋愛を続けるのであろうか。ビザの厳しいイギリスでは、頻繁に会いにくれば、ヒースローの移民局で1時間以上の足止めを食う。これは、私が経験済み。同行していても偽装カップルと思われる。よって彼に来日の意思があるか確認するのが筋であろう。 そして最後にゴールである結婚事情。2002年にロンドンで生まれた赤ちゃんの3人に一人は未婚の母という数字が出ている。高校生妊娠は田舎の方が多く、英国版負け犬が精子バンクを利用するというのも、いまだに少数派。つまり、同棲状態で子供も生んでしまう今般、「妊娠してしまったの。」は結婚を押し切る武器にはならない。 ブリジットはプロポーズにこぎつけるが、あくまで「シングルトン=彼がいない」という定義なのだ。「負け犬=結婚したか、しないか」という定義は日本では盛り上がっても、イギリスでは「ふ〜ん。」で終ってしまう可能性が大なのだ。 日本人との結婚の経験がなく、ガイジンとの結婚がフツーな、いわゆる勝ち犬?である私は、現時点でそうとう嫌われているに違いない。ここはBest of Luckと幕を閉じたほうが賢明だろう。「日本人と結婚しなかった理由」とか、「ガイジンと結婚するハウツー本」を書く方が有益かも知れぬ。 |
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